『ムーラン・ルージュ新宿座』書評 矢野誠一 「岩手日報」

岩手日報」(2011年10月30日付)で矢野誠一氏に拙著『ムーラン・ルージュ新宿座――軽演劇の昭和小史』の書評をいただいた。矢野氏は戦後のムーランに観客として足を運んだ一人であり、軽演劇の基本文献『エノケン・ロッパの時代』(岩波新書)の著者。ありがとうございます。 

本書によって、そんな〔観客として通った〕ムーランの全貌がやっと姿を現した。ムーランに関する、これだけ精緻を極めた調査と考察がなされたことはこれまでなかったし、今後もこれにつけ加えるものも、ほとんどないと思われる。〔略〕記述の対象が、作者、演出者、役者、スタッフ、製作者によって創造された舞台に限定されがちな演劇史、劇場史の通弊から脱して、興行の裏面や金銭問題のトラブルなどがからんだ人間模様、さらに加えてそれを生み出した時代の世態、風俗にまで筆が及んでいるのが手柄と言える。