勝手にアングラ祭り

7月27日 マチネー、ソワレとアングラ観劇

1)万有引力『呪術音楽劇 邪宗門』@座・高円寺 14:00〜(追加公演)自由席
万有引力の公演は実に10年以上の観劇。寺山修司没30周年・万有引力創設30周年公演。

 『邪宗門』はその脱演劇的なコンセプトを含め、現在の視点で見ると、特に中年の演劇観客からは実に恥ずかしいくらいにストレートな舞台だ。しかし、約10年ぶりの万有引力観劇で驚いたのは音響の良さ。改めて寺山作品に於けるJ・A・シーザーの楽曲の重要さを感じた。以前の万有引力は、楽曲には惹かれながらも音響的な物足りなさがあったが、今回はノイジーな音の迫力が終始客席を圧倒していて、寺山の演劇が〈音楽劇〉であることの意味を改めて実感した。
 格好いい。気持ちいい。「呪術音楽劇」の本領発揮である。
 舞台装置や俳優陣の演技もこれまでと変わりない「古典芸能」的なアングラ・寺山演劇で実に心地よかった。こうした方法が寺山演劇にどの程度プラスになるかは知らないが、これが「寺山修司のアングラ演劇だよ」と学生に示す上では、今後も引き続き公演を絶やさないで欲しい。興味本位とは別に、心地よさを感じたのは本公演が初めてだ。
  出演者の身体も美しく、最後の、今となっては恥ずかしいアジテーションも個人的には恥ずかしさを抜きに作品のテーマとして聴くことが出来た。いや、本当に彼らの筋肉や容貌の綺麗さはどうしたものだろう。僅かにタトゥーが見られたが、それ自体が分かりやすいアウトサイダーの健全さに感じられた。アングラであれ、だらしない素人的な身体はもう見られないのかなぁ。

2)唐十郎作・蜷川幸雄演出『盲導犬』@シアター・コクーン 19:00〜
 澁澤龍彦の原作を換骨奪胎してみせる唐十郎の脚本は言わずもがなの面白さだが、どうしてもコクーンという劇場の規模では広すぎる印象で、最後まで場違いな作品に思われた。
 昼に万有引力を観たせいもあるが、アングラにはアングラに相応しい空間がある。
何でも笑うオバ様相手に古田新太に下ネタをやらせても毒にもならず……「あらまぁ、ハハハ」と消化する客席に呑まれたアングラの無惨を見せられたような公演だった。